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デジタル教科書の機能と未来:教育の新たな潮流を探る

デジタル教科書の機能と未来:教育の新たな潮流を探る

記事公開日: 2023/12/07

最終更新日:2026/01/14

「デジタル教科書」とは、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコンで利用できるようデジタル化した教材のことです。現在はデジタル教科書の本格導入への取り組みが段階的に進んでおり、教育現場が大きく変容しつつあります。

デジタル教科書を活用することで、従来の紙の教科書ではできなかった動きや音を伴う学習体験が実現します。これにより、児童生徒のより深い理解や主体的な学びへとつながることが期待されています。

本記事では、デジタル教科書の概要や基本的な機能をはじめ、教育にもたらす新たな潮流、国内外の具体的な活用事例などを詳しく解説します。また、市場の拡大が教育環境に与える影響についても触れながら、デジタル教科書が切り拓く教育の可能性を一緒に探求していきましょう。

目次

デジタル教科書の全貌


まずは「デジタル教科書とは何なのか?」を明らかにするため、基本概念や従来の教科書との違いについてみていきましょう。

デジタル教科書の基本概念

「デジタル教科書」とは、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコンで利用できるようデジタル化した教材を指します。

「デジタル教科書」は、児童生徒が主に使用する「学習者用」と、教員向けの「指導者用」の2つに区分されています。「学習者用」は1人の生徒につき1台のデジタル端末を利用して学習することが、「指導者用」はプロジェクター等を活用し、クラス全体へ情報を提示する形での使用が前提とされています。

2023年度までは一定の基準のもとでの試験的利用が主でしたが、2024年度からは小学5年生から中学3年生の「英語」で、デジタル教科書が紙の教科書と同様に「主たる教材」として利用されています。2025年度からは「算数・数学」でも希望する自治体での導入が始まっており、今後も段階的に他教科へ拡大される予定です。

>参考: 学習者用デジタル教科書について【文部科学省公式サイト】

教科書とデジタル教材の違い

「デジタル教科書」を理解する上で、よく混同される「デジタル教材」との違いを整理しておくことが重要です。

「デジタル教科書」は、紙の教科書の内容をそのままデジタル化したものです。中身は紙の教科書と全く同じであり、表示されるデバイスが異なるだけです。一方、「デジタル教材」は教科書の内容を補完するための動画やドリル、アニメーション等のコンテンツを指し、補助教材として位置づけられています。

現在は両者を併用して授業を進めるのが一般的です。主な機能の違いは以下の通りです。

【デジタル教科書の主な機能】

  • 拡大・縮小 / 書き込み・保存 / 機械音声読み上げ / 文字色・背景色の反転 / 漢字へのルビ表示

【デジタル教材の主な機能】

  • 動画・アニメーションの再生 / インタラクティブなドリル・ワークシート / ネイティブによる朗読音声

デジタル教科書の範囲と限界

学校教育で使用される「教科書」は、文部科学省が著作権を持つか、検定を経たものに限られます。デジタル教科書の内容は紙の教科書と同一であるため、デジタル版独自の検定はありませんが、その「範囲」は厳格に定められています。

【デジタル教科書の範囲内にあたるもの】

  • 教科書と同一の文章・図版(およびそれらを読み上げた機械音声)
  • 機械演奏による音楽コンテンツ

【デジタル教科書の範囲外(デジタル教材扱い)となるもの】

  • プロのナレーターや声優による朗読
  • 英語のネイティブスピーカーによる音声
  • プロの奏者による音楽演奏

文部科学省は、現時点では「紙の教科書とデジタル教科書を適切に組み合わせること」を基準としており、両者の併用が運用の前提となっている点に注意が必要です。

>参考: 文部科学省「学習用デジタル教科書に関する法令の概要」

デジタル教科書の活用と可能性

デジタル教科書の多機能性を活用することで、従来の学び方がどう変わるのか。具体的な授業での活用法と、ICT機器との融合による発展性について解説します。

参考: 学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン

デジタル教科書を活用した授業の進め方

デジタル教科書の機能を活用することで、個々の生徒のニーズに合わせた学習が可能になります。以下は具体的な授業活用の例です。

  • 拡大表示機能:社会科の地図や理科の実験図を拡大し、細部まで正確に確認します。
  • 書き込み・保存機能:重要箇所にマーカーを引いたり、思考の過程をペンでメモしたりでき、その履歴をいつでも見返せます。
  • 音声読み上げ機能:機械音声による読み上げで、テキストの理解を聴覚からもサポートします。
  • 表示カスタマイズ:背景色の反転やルビ表示により、視覚的な読みづらさを抱える生徒の負担を軽減します。

教材とICTの融合による新しい学び

デジタル教科書・教材とICT環境が融合することで、以下のような新しい学びの形が期待されています。

  • 児童生徒の書き込み内容を、教室の大型スクリーンや各自の端末で即座に共有(シェア)する
  • ネイティブ音声や動画コンテンツを活用し、よりリアルな言語・科学体験を提供する
  • 「学習eポータル標準モデル」を通じ、異なるメーカーのソフト間で学習データを相互連携させる

これにより、開発元が異なるツールであってもスムーズな連携が可能になり、より快適で自由度の高いデジタル学習環境が構築されつつあります。

>参考: 文部科学省「文部科学省CBTシステム(MEXCBT)の活用について」

>参考: 文部科学省「デジタル教科書に関する制度・現状について」

デジタル教科書の導入背景と展望


デジタル教科書の普及を支えているのは、全国の小中学校で「1人1台端末」を実現した「GIGAスクール構想」です。このインフラ整備により、デジタル教科書の持つ多様なアクセシビリティ機能(拡大・音声化等)が全ての生徒に提供可能となりました。

2024年度の本格導入に向けた検討過程や、現場から上がる様々な意見について深掘りしていきましょう。

>参考: GIGAスクール構想の実現 【文部科学省公式サイト】

本格導入に向けたロードマップ

文部科学省は、2021年度から3年間にわたる実証実験を経て、小学校教科書の改訂期である令和6年度(2024年度)を本格導入の起点と定めました。

運用については、地域や教科の特性に合わせて以下のような多様なパターンが示されています。

  • 特定の教科で紙を完全にデジタルへ置き換える
  • 全ての教科で紙とデジタルを併用する
  • 発達段階に応じ、一部の学年でデジタルを主教材とする
  • 全教科でデジタルを主とし、必要に応じて紙を補助的に使用する

>参考: 文部科学省「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」中間まとめ

導入に対する現場の意見

本格導入にあたっては、期待の一方で慎重な意見も寄せられています。

【肯定的な意見】

  • 紙の教科書を補完、あるいは代替する教材として学力形成に非常に有効である。
  • 特別な配慮が必要な子を含め、デジタル化により学びの多様性が保証される。

【慎重な意見・懸念】

  • 学習効果の科学的根拠が不十分であり、読解力低下の懸念がある。
  • 長時間の使用による視力低下や姿勢の悪化、家庭での睡眠不足への影響が心配される。
  • 「教科書は紙であるべき」という教育観との乖離。

>参考: 検討会議中間まとめに関する意見募集の結果について

デジタル教科書導入の課題と解決策

制度化が進む一方で、運用コストや教育効果の検証など、克服すべき課題も明確になっています。

コストとアクセシビリティの障壁

大きな課題は「費用負担のあり方」です。現在、紙の教科書は無償給与されていますが、デジタル版はその対象外となっており、導入自治体の財政負担が課題です。また、家庭のネットワーク環境の差が教育格差につながらないよう、安定した通信インフラの提供も不可欠です。

セキュリティ面では、紛失やハッキングによる個人情報漏洩のリスク管理、そして破損時の修理体制など、端末管理(MDM等)の重要性が高まっています。

実証実験から得られたポジティブな成果

一方で、活用を継続している学校からは、以下のような具体的なメリットが報告されています。

  • 児童生徒の「主体的・対話的で深い学び」を促進するきっかけになった。
  • 個々の習熟度に応じた「個別最適な学び」を取り入れやすくなった。
  • 教員の資料作成負担が軽減され、生徒と向き合う時間をより多く確保できるようになった。

>参考: 文部科学省「デジタル教科書 実践事例集」

デジタル教科書の機能と利用法


デジタル教科書は単体でも有用ですが、デジタル教材と組み合わせることでその真価を発揮します。

基本的な機能と特別支援

デジタル教科書には、前述の基本機能に加え、学習上の困難を抱える児童生徒をサポートする「特別支援機能」が備わっています。デジタル教材と連携することで、以下のような高度な学習が可能になります。

  • 文字の抽出:本文からキーワードを抜き出してカード化し、要約や構成案作成に活用。
  • 動的コンテンツ:算数の図形を画面上で回転させたり、理科の現象をアニメーションで確認。
  • 反復演習:教科書準拠のデジタルドリルで、即座に採点と解説を確認し知識を定着。

メリット・デメリットとリスク管理

導入を成功させるには、利点だけでなくリスクへの対策も欠かせません。

【メリット】

生徒側は動画・音声による直感的な理解が進み、教員側は学習ログ(履歴)の取得により、一人ひとりの「つまずき」をリアルタイムで把握できるようになります。

【デメリットと対策】

学習外のサイト閲覧やアプリ使用を防ぐため、閲覧制限や機能制限といった端末管理の徹底が必要です。また、端末の破損や故障時の修理費用の負担ルールを保護者とあらかじめ合意しておくなど、運用ルールの明文化が求められます。

デジタル教科書の未来と展望


デジタル教科書の普及は、教育DXの柱として巨大な市場を生み出しています。富士キメラ総研の調査によれば、2030年度にはデジタル教科書の国内市場は500億円(2021年度比5.9倍)に達すると予測されています。

市場の拡大と教育業界の変化

印刷業界やシステム開発会社など、多くの民間企業が参入し、デジタル教材や学習管理システム(LMS)の需要が急増しています。2023年に公開された「学習eポータル標準モデル Ver.3.00」では、校務支援システムとの連携も強化され、教育現場のデジタル化はさらに自由度を増しています。

国内外の活用事例

【国内事例】

  • 小学6年・国語:書き込み・削除が容易な特性を活かし、物語文の構成案作成で試行錯誤を促進。
  • 中学3年・英語:朗読ツールとフラッシュカードを連動させ、音読への苦手意識を克服。

【国外事例】

  • 韓国:2015年から全校でデジタル教科書を解禁。法的根拠のある「教科書」として定着。
  • アメリカ:24州が「教科書」の定義にデジタルを含めており、iPad等の活用による成績向上事例も報告。

進化を続ける教育環境

デジタル教科書の導入は、単なるツールの変更ではなく「学びの質の転換」です。文部科学省が推進する「12のやめることリスト(デジタル化への移行)」などを通じ、教員の校務負担も軽減されつつあります。

今後、生成AIなどの最新技術との融合により、教育現場はより自由度が高く、一人ひとりが自分らしく学べる環境へと進化していくでしょう。現場のニーズに合わせた工夫や、適切な端末管理(MDM)の導入を行いながら、この新たな潮流を最大限に活用していきましょう。

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