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デジタル教科書の現在と未来 - 普及率から見る教育の変革

デジタル教科書の現在と未来 - 普及率から見る教育の変革

記事公開日: 2023/12/14

「デジタル教科書」とは、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコンで利用できるようデジタル化した教材を指し、デジタル教科書が教育現場にもたらす変化は、単なる「教材のデジタル化」以上の価値があります

デジタル教科書の普及は着実に進んでいるものの、今でもICT教育の遅れが指摘されていたり、多くの課題が残っているのが現状です。

本記事では、デジタル教科書の普及率とその背景、科目別の導入計画、そして教師と生徒が直面する新しい学習環境について詳しく解説します。デジタル教科書が教育現場にどのような影響を与え、今後どのように進化していくのか、その全貌を明らかにしますので、最後までお付き合いいただけますと幸いです。

目次

デジタル教科書の普及と展開

「デジタル教科書」とは、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコンで利用できるようデジタル化した教材のことです。

全国の児童生徒1人につき1台のデジタル端末と高速通信ネットワークを一体的に整備する文部科学省の取り組み「GIGAスクール構想」により、小中学校では2021年末までに1人1台の学習用端末の整備が完了しました。同省では、2024年からデジタル教科書の本格導入に向けた取り組みを進めています。

>参考: GIGAスクール構想の実現 【文部科学省公式サイト】

デジタル教科書の導入時期と科目

なぜデジタル教科書が導入されるようになったのでしょうか?そしてどの科目に、いつから導入されるのでしょうか?導入の背景や時期、科目別の計画について解説します。

導入の背景と目的

デジタル教科書が導入される背景には、パソコンやタブレットなどのICTが一般的に普及しているという社会事情があります。教育の現場でも同様に、ICTを活用した取り組みや学習環境が当たり前のものになりつつあるのです。

またデジタル教科書を取り入れることで、ICT教育の発展に加えて、2020年度から学習指導要領が推進している「主体的・対話的な学び」を促すという目的があります。従来の紙の教科書では利用できなかった拡大機能などを活用できるので、児童生徒の興味関心を惹きやすくなり、より主体的に学習に取り組むことが期待されています。

その他にも、各児童生徒に最適な学びを提供したり、学習内容のより深い理解を促したりするのに有効であると見込まれています。空間や距離を超えて共通の話題をシェアすることもできるなどの新しい学び方も登場しており、対応できるプラットフォームとしてデジタル教科書の導入が進んでいるのです。

科目別導入計画

2024年度にデジタル教科書が本格的に先行導入される科目は「英語」です。対象となる学年は小学校5年生から中学3年生で、デジタル教材と併用することで、より効果的に学べることが期待されています。

具体的には、デジタル教材を通した英単語のネイティブの発音確認や、朗読ツールを活用した学習方法などがあり、英文読解や音読活動への苦手意識の克服につながります。

また授業時間数が多く、教育現場での需要も高い「算数・数学」での段階的な導入も予定されており、その他の科目の導入の検討も進んでいます。

デジタル教科書の普及率と現状

デジタル教科書は現在どの程度普及しているのでしょうか?現状についてみていきましょう。

教科書のデジタル化進捗状況

文部科学省の調査によると、学習者用デジタル教科書の発行状況は、小学校教科書が令和元年度の20%に比べ、令和4年度は93%、中学校教科書は令和2年度の25%と比べ、令和4年度には95%まで達成しており、発行比率が大きく向上したことがわかります。

また文部科学省は、令和4年10月に発表した「令和3年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」にて、令和4年3月1日時点の指導者用・学習者用デジタル教科書整備率や、学校におけるICT環境の整備状況等を公開しました。

同資料の「学校種別 学校における主なICT環境の整備状況等」によると、学習者用デジタル教科書の整備率は、小学校では40.1%、中学校は41.5%、高等学校は6.1%でした。

前年のは「小学校6.4%、中学校5.9%、高校5.3%」だったので、小中学校では飛躍的に普及率が高まったと言えるでしょう。しかし、まだ半数には届いておらず、高等学校においてはまだまだ普及しているとは言い難い状況にあります。

>参考: 文部科学省「学習者用デジタル教科書について」

教師と生徒のICT利用状況

教師と生徒のICT利用状況について、先述した資料によると、指導者用デジタル教科書整備率は平成30年3月時点で50.6%だったのが、令和4年3月1日時点には81.4%に、学習者用デジタル教科書整備率は、令和2年3月時点で7.9%だったのが、36.1%に増加しています。

教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数の平均値は、前年が1台につき1.4人だったのが、0.9人となっており、学校における主なICT環境の整備が進んでいることがわかります。

学習者用デジタル教科書の普及率を都道府県別で見ると、最も普及率が高い和歌山県と最も低い愛知県では約2.5倍の差があり、地域による格差は大きな課題です。

>参考: 文部科学省「令和3年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」

デジタル教科書の効果的な活用法

デジタル教科書の理解が進んできたところで、効果的な活用法についてみていきましょう。

科目別のデジタル教科書活用事例

デジタル教科書は、「個別・グループ・一斉」学習など、さまざまな授業形態に合わせて活用できる上、特別な支援を必要とする児童・生徒が、学習上の困難を軽減させる役割も果たします

紙の教科書では利用できなかった機能を活用することで、児童生徒の学習理解をサポートできる点が大きなメリットです。以下では科目別に、デジタル教科書の機能別の特徴や活用法を紹介します。

【国語】

教科書の漢字に「ルビ」をふることができる機能を活用して、漢字が苦手な児童生徒の学習をサポートします。

「書き込み機能」では、教科書に直接マーカーを引いたり、メモをとったりしながら学習することが可能です。書き込んだ内容を保存・表示することができるほか、簡単に削除することもできるため、失敗を恐れず積極的にメモをとることにつながり、効果的な学習が期待できます。

【英語】

児童生徒の学習の充実を図るための「学習用デジタル教材」に搭載された「朗読機能」を併用することで、英語の教科書に掲載された英文のネイティブスピーカーによる朗読を聞くことができます。自然な発音を学べるのが特長です。

【算数・数学】

先述した学習用デジタル教材にはドリルもあり、算数・数学では、教科書の内容に連動したドリルで効率的に学習することができます。回答から答え合わせまで、自分1人で完結できるのが特長です。

【社会】

「拡大機能」を活用することで、地図などの詳細な情報や細かい地名を確認することができます。

【理科】

教室では観察が難しい生物・現象に関する「動画や写真」を閲覧することができるため、対象に関する児童生徒の理解を深められるほか、興味関心を引くことにもつながります。

【家庭科】

調理用具の使い方や、使用上の注意などの「解説動画」を視聴することができ、生徒のより深い理解を促します。

また、デジタル教科書やデジタル教材を併用することで、各児童・生徒の異なる考えを比較する対話的な学びが実現するほか、書き込んだ内容をほかの生徒と共有して話し合うなど、様々な科目において多角的に理解を深めることが可能です。

特別支援教育における活用事例

デジタル教科書は、障害のある児童生徒や外国人児童生徒などを含む、特別な配慮が必要な児童生徒への教育や、特別支援学級での学びにも役立ちます

例えば、これまで視覚に問題のある児童生徒は拡大教科書を利用していましたが、図表の文字サイズが十分でない場合、ルーペなどを使用しなければなりませんでした。しかしこのような課題もデジタル教科書の利用で解決できます。

具体的には以下のような活用事例があります。

  • 文字色や背景色の変更、反転:表示された文字色や背景色を変更・反転するなど、自分の見やすい配色で学ぶことができます。
  • 拡大機能の活用:文章だけではなく図表や写真も見やすい大きさに調整可能。拡大することで、児童が課題や解法の考察活動に集中しやすくなるという効果もあります。
  • 機械音声での読み上げ機能:機械音声の高さ・速さを選択して、各生徒が聞き取りやすい速度でテキストの読み上げを行えます。(プロの朗読は「デジタル教材」に分類されます。)

デジタル教科書の教育効果

改めて、デジタル教科書を活用することで得られる教育効果について確認しましょう。以下では「個別最適化学習への寄与」「協働学習の促進」の2点について解説します。

個別最適化学習への寄与

デジタル教科書を活用した教育効果には、「個別最適化学習への寄与」があります

「個別最適化学習」とは、先述した「GIGA(ギガ)スクール構想」のコンセプトのひとつです。専門性の高い教員が学習機会を提供する「学習の個性化」と、生徒の状況に合わせて柔軟に指導する「指導の個別化」の2つを軸に、児童生徒一人ひとりの個を尊重して学習できる環境を指します。具体的には以下のようなポイントがあります。

  • 書き込みや保存を繰り返し行えるため、自分自身で発見する新しい気づきがある
  • 児童生徒が自らのペースで学習できる「自由進度学習」の際に有用
  • 書き込みや画像の貼り付けで自分だけの教科書を作成できる
  • 学習履歴データの取得によって、教師は個々の習熟度により適したフィードバックを伝えられる

また、これまで個別指導を行うにはイニシャルコストの高さが大きな課題となっていましたが、デジタル教科書を活用することで、比較的低コストで多様な選択肢を児童生徒に提供することができるため、より良い学習環境につながることが期待されています。

>参考: 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた教科書・教材・ソフトウェアの在り方について ~ 審議経過報告(案) ~

>参考: 先端教育 学習者用デジタル教科書が実現する1人1台端末時代の個別最適化学習[AD]

協働学習の促進

一方デジタル教科書の活用は「協働学習の促進」にも役立ちます

「協働学習」とは、学校や地域、家庭など他者との関係において、互いに個性を認めて連携しながら主体的に学ぶことです。多様な個人の考え方を認めた上で、それぞれの立場で意見を発表・議論することを指します。

以下が協働学習の具体例です。

  • 個々の考えを大型掲示装置に表示してクラスメイトと共有し、意見交換をする
  • クラウドを通じてそれぞれの児童生徒が行った教科書への書き込みをシェアし、意見交換や議論を促す
  • 伝えたいポイントや考えを、スタンプの活用や線の色の変更などで直感的にビジュアルで表現し、自分の考えをよりわかりやすい形でクラスメイトや教師に伝える

デジタル教科書の未来と課題

文部科学省は、2024年度における学習者用デジタル教科書の本格導入を目指していますが、そこにはどのような未来が待っているのでしょうか?展望と予測される変化などを解説します。

2024年度本格導入に向けた展望

文部科学省では2021年度より、紙とデジタル化した教科書の両者を併用した導入効果や、役割分担などを検証する実証実験を開始しました。その後も、22年度には全小中学校での実証事業が、23年度には学習者用デジタル教科書実証事業が実施されました。

先述したように導入は段階的で、先行導入として小学校5年生から中学3年生の「英語」の授業で、その後は需要の高い「算数・数学」の授業で導入されることが検討されていますが、経費の問題や慣れるには数年は必要と考えられているため、しばらくは紙とデジタルの教科書を併用していくとされています

他にも、デジタル教科書の不具合や故障、心身への影響の懸念など、解決すべき課題は山積みであり、効果検証が急がれています。

市場と教育現場の変化

デジタル教科書の本格導入への取り組みが進むことで、市場の拡大や関連するソフトウェアへの注目度の高まりなど、様々な分野において変化が生まれています。

実態調査とコンサルティングを提供する株式会社富士キメラ総研が2022年11月に発表した調査によれば、2030年度にはデジタル教科書の国内市場が500億円(2021年度比の5.9倍)、教育DX/ICT関連の国内市場は3,644億円まで及ぶと予測されており、関連するソフトウェアやサービス、ツールへの需要の高まりなど、民間企業における商機も増加することが見込まれています。

教育現場では、重たい教科書の持参が問題になっていましたが、タブレットを活用することで1台にまとまり、登下校時の負担が軽減されるというメリットがあります。タブレット1台で済むので、忘れ物も防げるのもポイントです。

また、文部科学省は2024年度を目途に、全国学力テストのCBT化(Computer Based Testing)を目指すとし、実現への取り組みも始まっています。

CBT化によって児童生徒がつまずきやすい問題などを分析・把握できるほか、教員側における一連の工程(テストの回収、集計、採点)を効率化できるという利点もあります。今後は入学試験や定期試験などもCBT化されると見込まれています。

>参考: 株式会社富士キメラ総研 プレスリリース『教育DX/ICTソリューション市場総調査 2023』まとまる

デジタル教科書導入における検討事項

最後に、デジタル教科書導入の課題とその解決策について紹介します。

教師のICT活用能力の向上

「指導者用デジタル教科書(もしくは教材)」は、教師向けに開発されたデジタル教科書です。プロジェクターなどを活用して、拡大表示できる情報提示型で使用されることが前提とされています。

指導者用教科書には解説動画が収録されており、授業をサポートしてくれるほか、デジタル教材では教科書には掲載されていない音声や写真などのコンテンツが充実しており、教師自身で編集して教材資料を作成できる機能も搭載されています。

指導者用デジタル教科書の導入にあたり、教師がデジタル教科書・教材をうまく扱えるかというICT活用能力の向上が検討事項として挙げられています。文部科学省は授業を担当する教師に対して、以下4つの項目についての自己評価を調査したところ、昨年度と比べて全ての評価が向上していることが明らかになりました。

  • 教材研究・指導の準備・評価・公務などにICTを活用する能力
  • 授業にICTを活用して指導する能力
  • 児童生徒のICT活用を指導する能力
  • 情報活用の基礎となる知識や態度について指導する能力

ICT活用指導力に関する研修を受講した教師の割合も増えています。

デジタル教科書の効果的な統合

デジタル教科書を効果的に活用することで、児童生徒の学習環境の向上だけでなく、教師の負担を軽減できるという効果もあります

拡大機能や機械音声読み上げ機能など、紙の教科書では叶わなかった様々な機能を活用することで、個人に最適な学習を実現してる上、内容のより深い理解をサポートしてくれる点も大きなメリットです。

指導者用のデジタル教科書は、教師の教材準備や授業進行のサポートをしてくれます。さらに文章の抜き出しや図式の流用を行い、教材準備を簡易化する資料作成機能が搭載されているデジタル教材を活用すれば、教師の負担を大幅に減らすこともできます。

効率化によって生まれた時間を、児童生徒と向き合うために有効活用することで、教育現場全体の向上も期待できるでしょう。

またデジタル教科書の導入に伴い、ビジネスにおけるデジタル活用のヒントや新たな商機を見出せる可能性もあります。これまで教育分野とは関わりのなかった事業でも、デジタル化によって今後新たに販路を見つけられるチャンスもあるでしょう。そのために、常にデジタル化やICT活用にアンテナを張っておくことが大切です。

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