Marketing CIRCUS DAYイベントレポート
あなたの推しは?
メディアで話題の"うまい棒総選挙"の舞台裏
2023年2月21日(火)に開催された『Marketing CIRCUS DAY』のテーマは、先日実施されたSNSキャンペーン「うまい棒総選挙の舞台裏」です。本記事では、スピーカーとして株式会社やおきん 営業企画部商品課 広報担当の小野貴裕氏、クラウドサーカス株式会社大野達郎、モデレーターとして同社南田慶子によるトークセッションの様子をレポートします。
前提:「利用」ではなく「活用」、「
使うだけ」でなく「成果を出す視点」が大切
本題に入る前に、まずは皆さんに意識していただきたい点についてお伝えします。
ARなどのツールを使う上では、「利用」ではなく「活用」、「使うだけ」でなく「成果を出す視点」が大切になります。最先端の技術だから使うだけで成果が出る、というわけではありません。正しく使うための企画設計をすることが重要です。
「何を?(手段)」「誰に?」「何の為に(目的)」
を明確に
お医者さんから症状に合った適切な薬を処方してもらうのと同じように、「何を?(手段)」「誰に?」「何の為に(目的)」を明確にし、流行りの技術に振り回されず、目的に合わせた処方箋を考える必要があります。
最初は見込みが低い状態のユーザーが、知って興味を持って検討し、買った後は熱狂して、ほかのだれかに推してくれる状態に持っていくという流れは、ユーザーファネルと呼ばれます。このファネルの各フェーズにおけるマーケティングの打ち手は、薬を処方するように多種多様です。
たとえばバズらせたり、ファンマーケティングを行ったりするのもひとつの手段ですが、適切なタイミングで実施しないと効果が充分に発揮されないこともあります。企画設計においては、やりたいことと目的、それを支える要素を整理することが大切です。
本日の4つのテーマ
4つのテーマに沿ってお話いただきました。
- きっかけとローンチまでの流れ
- パフォーマンスデータ
- 企画の舞台裏
- 企画の設計
01:
きっかけとローンチまでの流れ
最初のお付き合いは、クラウドサーカス社にWebサイトリニューアルを依頼したことがきっかけ。
その後2021年のAR企画のお手伝い、翌年2022年に今回の「うまい棒総選挙」キャンペーンの相談をしました。
企画までのおおまかな流れは、6月下旬にご要望をいただいた後、8月下旬から制作開始。小野さんも非常にお忙しい中、隔週で打ち合わせをしていただきました。9月に初稿をご提案した後は、10月の企画実施に向けて内容をブラッシュアップしていった流れです。
全体のフローとしては、うまい棒総選挙の企画LPから各味のマニュフェストを募集→ユーザーの方にTwitterで推し味を投稿してもらい、投稿完了後にアンケートを回収しました。回答者はその場で抽選に参加でき、当たりとハズレで切り分けてコンテンツを表示する、という流れです。
また企画全体の役割としては、以下のように分担してプロジェクトを完成させています。
【やおきん様】
・ポスターデザイン
・マニュフェストの原稿作成
・パラメータ設定
【クラウドサーカス】
・企画全体のプランニング
・いただいた素材を使ってマニュフェスト動画
・投稿完了動画の作成
・チャットボット「IZANAI」による出口調査の内容作成
02:パフォーマンスデータ
参加者は30~40代の女性が最多。
うまい棒が全国の駄菓子屋に並んで「子どもの頃に食べた」世代がまさにこの世代。
Twitter投稿の数値
ARに関する数値
03:小野さんに聞く舞台裏
うまい棒の種類が15種類あるということをもっと認知してもらうための「総選挙」企画。
ネット検索をしても出てこない、ファン未公開の濃いコンテンツを提供するために、
社長や当時いる社員たちに歴史を深堀りする作業はこだわりました。
こだわった話
「総選挙」なので、各味ごとにマニフェストを作ったのですが、開発秘話までさかのぼるため、社長や常務、当時からいる社員たちに話を聞きました。しかしあまりに長い歴史の中で、情報が食い違ってしまったというエピソードも、まさに企画の舞台裏と言えるかもしれません。
香りにこだわった話や、なっとう味は3回やめている話など、ディティールを提供することでより印象づけをしたかったんです。「そういう味もあるんだ、食べてみたいな」という行動変容につなげたいという思いもあり、ここにはかなりこだわりましたね。
苦労した話
正直はじめは「オープンキャンペーンをする」「クイズ形式にしよう」くらいしか考えていなかったのです。ただ「うまい棒の種類が15種類あるということをもっと認知してもらいたい」と大野さんに相談させていただいたところ、「総選挙」というアイディアをいただきました。
せっかく「総選挙」という形でユーザーの方に好きな味に投票してもらうなら、プレゼントもすきな味のものにしたい。そこから、プレゼントの抱き枕を全15種類作成することに決めたため、スケジュールとしては非常にタイトでしたね。 すぐにうまい棒全15種類の写真を撮ってきて、抱き枕の断面図などの展開図も自分でレタッチして作成しました。巨大なうまい棒としてリアリティを出すためこだわりながらも、納期に合わせて急いで作る必要があったのは苦労した点ですが、その分抱き枕には思い入れがありますね。
改善点
弊社はSNSマーケティングに着手したのもつい最近で、これまであまり広告も運用してきていません。ただせっかくこれだけ作ったものを、もっと多くの人に認知されないともったいない。予算をしっかりとって、広告もやっていくべきだと感じたのが改善点ですね。
今後の展望
また弊社が取り扱っているほかの駄菓子も含めて、「やっぱり駄菓子といえばやおきん!」というイメージを持っていただき、駄菓子文化を新しい形で楽しんでもらえるように広げていきたいですね。
04:今回の企画の設計
企画を実現するための3つの思考プロセスと、実行する上でやるべき5つのこと
私が企画を考える上で重要視しているのは、以下の3つです。
①発想力(アイディアを練り出す):「何を?誰に?何の為に?」がブレないようにアイディアを出していく。
②選定力(そのアイディアで勝てるのか):社内外問わずさまざまなプロモーションの過去実績から成功ロジックを探して言語化、アイディアを選定していく。
③実現力(そのアイディアを実行できるのか):会社の方向性・仕組み・予算の中での実現可能性を見極めていく。
そして、企画を実行する上でやるべきことは次の5つです。
その1 『エンゲージメントを上げるための要素』
今回の企画において向上させるべきエンゲージメントは、以下のように定義しました。
・お客様に商品の種類を正しく理解してもらう
・愛着をもって継続的に買ってもらう
・企画に参加してもらう
その上で「好きを醸成させる」をキーワードに過去事例を探していき、具体的に何をやるかを、以下のポイントに気をつけながら言語化していきました。
・ユーザーのノイズにならないような接触頻度
・おもしろいなと思ってもらえるような企画
・一方的ではなく、ユーザーさんも参加できる内容
その2『タグ/イベント周知』
今回の企画はイベント性が強く、ハッシュタグ「#うまい棒の日」をのばす必要がありました。ユーザーの方が共有したくなるような座組は、おおよそこの4つで構成されています。
共振欲:「共有したい」気持ち
表現欲:「自分なりの意見や表現をしたい」気持ち
称賛欲:「認めて欲しい」気持ち
啓蒙欲:「知らせてあげたい」気持ち
タグやイベントを周知する上では、これらの欲求をどのように刺激するかが重要です。
その3『参加モチベーションの設計』
どんなによい企画でも、結局は参加してくれなければ意味がないため、参加してもらうためには以下の2つのポイントを刺激する必要があります。
Interest:興味を刺激する要素はなにか
Desire:欲求を刺激する要素はなにか
今回のようなオープンキャンペーンでは「Desire」の部分は設計がしやすいため、とくに「Interest」について考えました。Interestについては「自分の好きを共有したい」という気持ちが働きやすく、例として「自分の県に関することには興味がわきやすい=県民性インサイト」をくすぐるような企画が用いられることも多いです。
その4『メディア戦略:6つのポイント』
どうしたらメディアにピックしてもらえるかは、主にこの6つの軸から、メディアが喜びそうな企画の方向性を考えていきます。
・タイトルのコツ
・内容のコツ(トレンド生・唯一性・話題性・対立性など)
・入れ込む情報のコツ(役に立つ情報か、対象母数は多いのかなど)
・伝え方のコツ(専門性が高いか・意外性があるか、など)
・見せ方のコツ
・分かりやすさのコツ
その5『定点観測の方法と最大化』
やって終わりでは意味がなく、やってみてどうだったかを次に生かす必要があります。そのためにはどこを観測するかが重要で、また観測できるポイントを最大化するためには、今回の企画でいうとアンケートをとる必要がありました。
アンケートを取得する上では、
・アンケート獲得する母数をどう増やすか
・回答率をどうやってあげるか
・有効回答したくなるような流れ
といった点を意識して、企画に練り込んでいます。
目的次第ではあるものの、いわゆるユーザー体験を軸にした企画設計は、われわれのプロダクトの比較的得意領域です。具体的には、「体験によってなにかを理解してもらうこと」「すごいな、と感動することで意識や態度を変容させること」など、いわゆる好きを醸成することに対して効きやすい処方箋=ARやチャットボットだと思っています。
弊社のプロダクトは、比較的体験者のエンゲージメントを上げて、企画の完了率・シェア率を高く保てるため、このような組み合わせを採用することが多いので、企画のご相談がありましたらお気軽にクラウドサーカスまでご相談いただければと思います。
今回の企画は常に「どう成果を出すか」という視点で、その都度双方で目的を確認しながら進められたため、非常にスムーズに企画を進行できました。ここは企画の成功に大きく関わってくる部分のため、皆さんにも重要性が伝われば嬉しいです。
まとめ
皆さんの大好きなうまい棒。もっと多くの人に愛されるため行った企画の裏側の全貌をご覧いただきました。
キャンペーン企画を考えることが苦手という方は、まずは 「誰に、何を、何の為に?」を意識した計画立案を行ってみてください。このカンファレンスで少しでもデジタル化を推進するヒントが見つかれば幸いです。