Marketing CIRCUS DAYイベントレポート
元キーエンス伝説的トップ営業と語る、
製造業における強い営業組織の作り方
2023年7月4日(火)に開催したMarketing CIRCUS DAYでは、株式会社FAプロダクツ 会長 天野眞也氏をお迎えし、弊社執行役員の田中次郎、モデレーターの南田慶子とともに「製造業における強い営業組織の作り方」についてトークセッションいたしました。本記事ではその様子をレポートいたします。
本日の5つのテーマ
当日は、3つのテーマについてお話しいただきました。
- 序章:伝説はこうして作られた キーエンスのNo.1セールス時代
- 第一章:強い営業組織の作り方 ~個人施策編~
- 第二章:強い営業組織の作り方 ~仕組み化編~

序章:伝説はこうして作られた キーエンスのNo.1セールス時代
入社当時は営業がどんな仕事かさえ知らなかった
入社当時は「商品企画」や「マーケティング」をやりたいと言っていましたが、配属されたのは「ド営業」。研修でロールプレイングをやりましたが、まったくできませんでした。
では、いつから営業で結果がついてくるようになったのか。僕が最初に配属されたのは、茨城県つくば市の営業所でした。いい面でいうと、お客様である工場がたくさんありました。悪い面でいうと茨城県は土地が広い。だから営業先へ行くにしても片道1時間くらいかかりました。
こういう環境で僕が学んだのは、とにかく量をこなさなければいけないこと。茨城県は広いので、当時まだキーエンスの社名も知られていない中、訪問して結果を出すということがなかなかできないんです。なので電話をしたり、カタログを送ったり、訪問せずにたくさんの数をこなすことで商談のきっかけをつかもうとしました。
この新入社員のころに、後の営業活動に影響を与えた体験がありました。それは、カタログを送っただけのとあるお客様に、電話をしたらいきなり商材が売れたことです。僕に営業力があったわけではなく、たくさんカタログを配っていた中で電話をしたら「ちょうど、これ欲しかったから買うわ」と言われたのです。
このときに、無名の会社であれ、新入社員であれ、お腹が空いている人においしそうな料理を届ければ、物が売れるんだと気づきました。そして、当時東京で伸び盛りの企業が茨城に工場を作っていたという運も重なり、セールス1位を複数回取ることができました。
もうひとつ、キーエンスに入社してよかったと思うことがあります。それはストーリー作りの重要性を学べたことです。営業は売ってなんぼといわれますが、キーエンスではプロセスを重視します。どのくらい電話をしたのか、カタログを送ったのか、やればできることの積み上げをものすごく評価します。結果と1対1でつながるような行動目標の立て方に精通できたことは、非常によかったと思っています。
第一章:強い営業組織の作り方 ~個人施策編~
強みが明確にわかる提案資料の重要性
自社の強みが明確になっている提案資料を作成して、「うちの特徴はこちらです」とお客様に見せれば営業はしゃべる必要がなくなります。資料ならすぐにお客様は理解できますから、まずは目で見てもらうことが大事です。
また営業稼働時間でいうと、確かにキーエンスでは「朝9時から夕方5時まで会議を入れない」として、その間はお客様としゃべるというルールがあります。けれど、それよりもお客様から「人が目視でキズを見逃して、不良品が出ちゃったんだ」といった、これから商談化していくキーワードをもらったとき、それに対する答えを持っていく時間軸の方が重要だと考えています。
僕らの場合、100点満点の提案資料にならなくても既存資料をまとめて、翌々日までには60点くらいの内容でお客様に持っていきます。そうすると、「ここはこうじゃないんだよ。わかった、現場行こう」と現場を見せてもらえる。工場の現場はなかなか見せてもらえないですから、ここでひとつハードルを超えるわけです。
この段階になると、競合メーカーが来ても「もうキーエンスさんと話をして、現場も見てもらってるから」と他社は待たされてしまいます。なので、やはりスピードと資料化がとても大事だと思っています。
もうひとつのポイントは、抽象的な表現をなくすことです。キーエンスでは、営業のプロセスを全部数値化していて、たとえばロールプレイングを行うときも、7分以内で会社案内を行うロープレの練習を10回、というように数値化して確認します。
さらに営業は、朝礼・昼礼・夕礼を行い、月のKPIから1日のKPIへと落とし込んで毎日やることを朝礼で言います。そして夕礼では、その進捗はどうだったのかを話します。突発でお客様の問い合わせが入った場合は昼礼でリカバリーする、というように常にチェックをしていくわけです。
とはいえ、朝礼・夕礼をやってくださいという話ではなくて、まずは自分たちだけが提供できる価値を話し合って、差別化できるポイントを見つけてほしいです。どんな機材を持っているか、どんな資格のエンジニアがいるか、そこまで解像度を上げていけば必ず差別化のポイントはみえてきます。「ここがうちだけの価値です」と言い切ることが大事ですね。
第二章:強い営業組織の作り方 ~仕組み化編~
負けた理由を把握して次の開発にいかす
大切なのは、営業が負けたときにその理由をしっかりと残しておくこと。なぜなら、負けてしまってもその理由をリカバリーできる新しい商材やサービスを開発すればいいからです。つまり、「商材力」というのは、顧客接点を持っていて、お客様のニーズに対する負け理由も勝ち理由も次の開発にいかせる、この状況を作りましょうということです。
「商談供給の仕組み化」については、最新ツールを理解してマーケティング力を磨いてください。例えばいまですとYouTubeの活用をおすすめしています。商材のPRはすべて動画にして「ここを見ておいてください」と言えば、営業マンはしゃべる必要がないくらいです。
あとはSEO対策をやってください。いまのエンドユーザーは、欲しいときにすぐ情報を知りたいので、検索に連動させたコンテンツマーケティングが有効です。
先にCV(コンバージョン)を狙ってしまうと、商談数は多い、見積もりばかり書いている、けれども受注率は10%ということがあるんです。そうすると営業は、「見積もりしても意味がない」と不満がたまって、マーケティングを信じなくなってしまいます。
あとは、なぜ「商材化」からスタートしないかというと、「うちはこういう技術があるから」といって商材を作ると、マーケットやニーズと離れてしまうからです。だから、いまある強みを磨き込んで、ここがあれば競合に勝てるといったところから商材へもっていくという順番も間違って欲しくないと思っています。
まとめ
今回、「製造業における強い営業組織の作り方」についてお話しいただきました。量をこなすこと、プロセスを重視すること、徹底的に提案資料を作り込むことなど、天野さんがキーエンス時代に培ったたくさんのポイントを教えていただきました。営業に課題をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
またお話しにもありましたとおり、現代の営業活動においてYouTubeやSEO、そのほかSFA、CRMなどのデジタルツールの活用が非常に有効です。まずは自社の強みを抽出し、上手にデジタルを利用しながら、コンテンツマーケティングや商材力を強化していきましょう。今回のカンファレンスが、今後の営業組織づくりのヒントになれば幸いです。
イベントの様子はYou Tubeチャンネル「AMANOSCOPE」からご覧いただけます。 さっそく動画を見る