デジタル教科書の機能と未来:教育の新たな潮流を探る

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「デジタル教科書」とは、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコンで利用できるようデジタル化した教材のことです。現在はデジタル教科書の本格導入への取り組みが進み、教育現場が大きく変容しつつあります。

デジタル教科書を活用することで、従来の紙の教科書ではできなかったことを実現でき、児童生徒のより深い理解や積極的な学びへとつながります。

本記事ではデジタル教科書の概要や基本的な機能をはじめ、デジタル教科書がもたらす教育の新たな潮流や、具体的な活用事例などを紹介します。また、デジタル教科書の導入が教育市場に与える影響なども解説しますので、デジタル教科書が教育にもたらす可能性について一緒に探求していきましょう。

目次

デジタル教科書の全貌

まずは「デジタル教科書とは何なのか?」を明らかにするため、基本概念や従来の教科書との違いについてみていきましょう。

デジタル教科書の基本概念

「デジタル教科書」とは、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコンで利用できるようデジタル化した教材を指します。

「デジタル教科書」は、「学習者用」と教員向けに開発された「指導者用」の2つに区分されており、「学習者用」は1人の生徒につき1台のデジタル端末を利用して学習することが、「指導者用」はプロジェクターなどを活用し、拡大表示できる情報提示型で使用されることが前提とされています。

2023年度までは、特別な配慮が必要な児童生徒への対応や授業改善などを目的として、紙の教科書の代わりに一定基準のもとで利用されていましたが、2024年度からは、小学5年生から中学3年生の英語で、デジタル教科書が紙の教科書と同様「主たる教材」として利用されます。 今後は違う教科での導入も検討されており、段階的に実施される予定です。

>参考: 学習者用デジタル教科書について【文部科学省公式サイト】

教科書とデジタル教材の違い

「デジタル教科書」とよく似た言葉に「デジタル教材」があります。デジタル教科書を理解する上で必須となる言葉ですので、ここでしっかりと両者の違いや特徴を理解しておきましょう。

先述したように、「デジタル教科書」は紙の教科書の内容をそのままデジタル化したものであり、紙の教科書もデジタル教科書も「紙面に表示されているか」「デバイス上に表示されているか」の違いだけで、中身は同じです。

一方で「デジタル教材」は紙の教科書に記載されていない動画やアニメーションなどのコンテンツを指します。「デジタル教科書」での学習サポートのために利用され、補助教材に位置付けられています。

現在では教科書の内容に合わせたデジタル教材も用意しており、デジタル教科書とデジタル教材を併用して授業が進められるのが一般的です。デジタル教科書とデジタル教材には以下のような機能があります。

【デジタル教科書の機能】

・拡大/書き込み/機械音声読み上げ/背景や文字色の変換・反転/保存/漢字へのルビ

【デジタル教材の機能】

・動画・アニメーション/ドリル・ワークシート/朗読

デジタル教科書の範囲と限界

学校では「教科書」を使用することが義務づけられています。

その「教科書」とは、文部科学省が著作の名義を持つものか、出版社が編集した原案を文科省が調査し、文部科学相が合否を決定する「教科書検定」を経たもののみに限られており、内容が厳選されているのが特徴です。デジタル教科書の内容は紙の教科書と同じであるため、デジタル教科書に限った検定は行われていません。

以下で、デジタル教科書にあたるものとそうでないものを明らかにしておきましょう。

【デジタル教科書の範囲内にあたるもの】

【デジタル教科書の範囲外となるもの】

文部科学省公式サイトでは、学習者用デジタル教科書を使用する際の基準として「①紙の教科書と学習者用デジタル教科書を適切に組み合わせた教育課程を編成すること」が明記されています。現時点では、 両者の併用が前提とされていることを覚えておきましょう。

>参考: 文部科学省公式サイト「学習用デジタル教科書に関する法令の概要」

デジタル教科書の活用と可能性

デジタル教科書に関する理解が深まったところで、具体的な授業の進め方について見ていきましょう。

また、文科省は下記ガイドラインにて、デジタル教科書を活用してできることに加え、デジタル教材やICT機器を組み合わせて実現できる、新たな学習の取り組みについても紹介しているので、その取り組みについても以下で詳しく紹介します。

参考: 学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン

デジタル教科書を活用した授業の進め方

先述したように、デジタル教科書には様々な機能が搭載されています。それらの機能を場面に応じて利用することで、紙の教科書では実現できなかった方法で学ぶことができます。以下が授業の進め方の例です。

また、「デジタル教材やICTと融合(後述)」することで、さらに高い学習効果が見込めます。

教材とICTの融合による新しい学び

デジタル教材とICTを融合することで、具体的には以下のような新しい学習方法が期待されています。

【デジタル教材やICTと融合した取り組み】

また、上記のような様々なツールや教材をよりスムーズに利用する際に必要とされているのが、デジタル学習環境をより快適にする「学習eポータル標準モデル」という取り組みです。

導入することで、開発元が異なるツールやソフトウェア間でもデータの活用・共有が可能になるため、多様なツールを相互連携させるためのシステムとして開発が行われてきました。今後もさらに、ICTを融合した新しい学びは発展していくことが見込まれています。

>参考: 文部科学省 総合教育政策局 教育DX推進室「文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)の活用に関する説明会」

>参考: 文部科学省「デジタル教科書に関する制度・現状について」

デジタル教科書の導入背景と展望

デジタル教科書の本格導入には、「GIGAスクール構想」によるICT環境整備の実現も大きく影響しています。「GIGAスクール構想」とは、全国の児童生徒1人につき1台のデジタル端末と高速通信ネットワークを一体的に整備する文部科学省の取り組みです。

教科書がデジタル化されたことで、文字の拡大や色の変更、文章を音声で読み上げるといった機能を利用できるため、学習障害や視覚障害がある生徒が学びやすくなる上、学習環境の改善にも効果があると期待されています。

本章では2024年度におけるデジタル教科書の本格導入に向けた取り組みや、導入に対する様々な意見について詳しく解説します。

>参考: GIGAスクール構想の実現 【文部科学省公式サイト】

2024年度の本格導入に向けて

文部科学省では2021年度より、紙とデジタル化した教科書の両者を併用した導入効果や、役割分担などを検証する実証実験を実施しました。その後も、22年度には全小中学校での実証事業が、23年度には学習者用デジタル教科書実証事業が実施されました。

同省では有識者会議をまとめた資料「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議

中間まとめ」にて、「小学校用教科書の改訂時期である令和6年度(2024年度)を、デジタル教科書を本格的に導入する最初の契機」だとし、着実に取り組んでいくべきだと明記しています。

同資料の中では、紙とデジタル化した教科書の使用について、以下のようなパターンが示されています。

>参考: 文部科学省 デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめ

>参考: 令和5年度 文部科学省 学習者用デジタル教科書実証事業

導入に対する様々な意見

デジタル教科書の本格導入には様々な意見が寄せられています。

文部科学省に寄せられた意見では、紙の教科書に替わる教材としてデジタル教科書の導入に賛成する声もあるものの、学習効果の科学的根拠を問う意見や、効果の見極めなど、懸念する声も多く上がっています

以下に、「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめに関する意見募集の結果について」に記載された、分野ごとの主な意見の概要を一部抜粋します。

【紙の教科書と学習者用デジタル教科書の関係について】

【学習効果について】

【特別な配慮が必要な児童生徒への対応について】

【健康面への影響に対する配慮について】

本格導入に対する慎重派の意見が多い中、どのように仕組みづくりをして取り組んでいくかが重要になっています。

>参考: デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめに関する意見募集の結果について

デジタル教科書導入の課題と解決策

デジタル教科書の本格導入は新制度に盛り込まれてはいるものの、現在も多くの課題が残っています。

本章では、特に大きな課題である「コストとアクセシビリティ」、そして十分検証されたとは言い難い「教育効果」について、その内容と解決策を解説します。

コストとアクセシビリティの問題

デジタル教科書の導入におけるコストの問題とは、紙の教科書は無償で提供されている一方、デジタル教科書は無償化の対象外であるというものです。そのため、これまでデジタル教科書を導入した自治体は自らその費用を支払うなど、大きな負担がかかっていました。

価格の基準も定まっていないという現状もあり、学習者や指導者、自治体の負担を減らすためにも、今後詳細なルールを選定していく必要があります。さらに現時点では、デジタル教科書を発行する義務は教科書会社になく、各社の方針や工夫、努力次第とされている点も大きな課題です。

アクセシビリティという点では、端末の管理の問題や、安定的なネットワークの整備が必要になるため、家庭環境や地域環境によって教育環境に差が出るという問題が懸念されています。ひとつの端末で多くの情報やコンテンツを扱えるのは便利ですが、紛失やアクセス制限、情報保護などの対策も練らなければなりません。教材だけでなく、デジタル教科書を活用した学習をサポートするツールやソフトウェアの準びなども必要になっています。

>参考: 文部科学省公式サイト「12. 教科書無償給与制度」

>参考: 文部科学省「教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループについて(案)」

実証実験から見える教育効果

21年度から始まった、教育効果等を検証する実証実験ですが、22年度には全小中学校に英語のデジタル教科書・デジタル教材が無償で配布され、2023年度には各参加校に対して「小学校5年生~中学校3年生の英語及び算数・数学」の学習者用デジタル教科書が提供されるなど、引き続き効果的な活用法や教育効果の検証が行われています。

デジタル教科書等の活用に取り組む学校からは、以下のような意見が出ています。

本格導入には様々な意見が寄せられていることは先述しましたが、一方でデジタル教科書を活用する効果を感じている学校があることもわかります

>参考: 文部科学省 令和5年度予算「学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業」に参加予定の学校の皆様へ(事前の登録作業のお知らせ)

>参考: 文部科学省 デジタル教科書 実践事例集

デジタル教科書の機能と利用法

改めて、デジタル教科書の機能と利用法についてみていきましょう。

基本的な機能と特別支援機能

デジタル教科書には、「デジタル教科書の全貌」の章でお伝えした「基本機能」に加え、児童・生徒の特性により最適なサポートができる「特別支援機能」が備わっています。

デジタル教材と組み合わせて使用することで学習効果をより高めることもでき、シーンや学習内容に合わせて柔軟に活用することが重要 です。

デジタル教材との連携

デジタル教科書とデジタル教材を連携して活用することで、具体的には以下のように学習することができます。

デジタル教科書のメリットとデメリット

デジタル教科書の活用におけるメリット・デメリットについて、生徒側・教員側の視点から解説します。

デメリットをしっかりと理解し、対策しておくことで、スムーズに導入することができます。

生徒と教員の視点からのメリット

生徒視点からのメリットは、書き込み保存や音声、映像など、デジタル教科書ならではの機能を活用して学習できるという点です。

デジタル教科書では、書き込み保存や書き込んだことの文字の修正・削除ができるので、より簡単に書き込みを行うことができます。デジタル教材を併用して動画や音声を活用することで、難しい内容でもわかりやすく学ぶことができ、理解が深まるという利点もあります

英語の授業で音声朗読機能を活用すれば、より正しく且つナチュラルな発音を聞くことができるため、繰り返し聴くことでリスニング力などの向上も期待できます。

教員視点からのメリットとしては、児童・生徒の学習状況や学力の把握が容易になる点や、授業の記録なども効率的に行えるという点が挙げられます。

テストを実施した際の得点集計に加え、学習ログの取得や学力分析を行うこともできるため、児童・生徒の学習状況をより正確に把握することが可能です。教員側における「教育指導の質の向上」も見込めるでしょう。

デメリットとその対策

デジタル教科書を導入すると、端末を利用する必要があるため、生徒が端末にのみ集中してしまうというデメリットがあります

学習に関係のないアプリのダウンロードや、学習以外の目的でのWebサイトや動画の閲覧なども懸念されます。端末には閲覧制限や機能制限、アプリのダウンロード制限など、端末管理を実施することが必要です。

教員・学校側では、あらかじめ端末に対してのセキュリティ管理や、破損時の対応策を講じておく必要があります。紛失やハッキング被害などのケースも考えられるため、万が一の場合に備えておきましょう。

端末が破損・紛失した場合は、修理代を保護者が支払わなければならないという問題や、児童生徒が一時的に学習できないという問題が生じる可能性があります。ハッキング被害を受けた際は、該当児童の名前や成績などの個人情報が漏えいする恐れもあるでしょう。

便利な反面、リスクに備えてより一層の注意を払わなければいけないという点がデジタル教科書のデメリットといえます。予め対応策を練っておきましょう。

デジタル教科書の未来と展望

デジタル教科書の本格導入への取り組みが進むことで、市場の拡大や関連するソフトウェアへの注目度の高まりなど、様々な分野において変化が生まれています。

実態調査とコンサルティングを提供する株式会社富士キメラ総研が2022年11月に発表した調査によれば、2030年度にはデジタル教科書の国内市場が500億円(2021年度比の5.9倍)、教育DX/ICT関連の国内市場は3,644億円まで及ぶと予測されています。

以下ではデジタル教科書のこれからについて、市場の拡大という視点から解説します。

>参考: 株式会社富士キメラ総研 プレスリリース『教育DX/ICTソリューション市場総調査 2023』まとまる

市場の拡大と教育への影響

デジタル教科書の本格導入が進むにつれて、民間企業における商機も増加することが見込まれています

例えば、デジタル教材やデジタルコンテンツの開発に加え、デジタル教科書を活用した学習をサポートするツールや、授業内でのスムーズな扱いを促すシステムなどのソフトウェアに注目が集まっており、印刷大手や中堅、中小企業、関連サービス・ツール・システムの需要がさらに高まると予想されています。

デジタル教科書における課題とも言える「端末管理」を行うシステムも重要とされ、デジタルデバイスを一括管理して、セキュリティ対策や一斉導入における業務効率化を実現できる「MDM」の導入も進んでいます。教育分野に関わりのなかった事業者も、デジタル化によって新たな販路が見込まれる可能性もあるでしょう。

市場が拡大してより良い学習環境が整っていくことで、教育効果もさらに高まっていくことが期待されています。

教育市場における新たな動向

学習eポータル標準モデルのVer. 2.00までは、学習eポータルと、文部科学省によって開発されたオンライン教育システムである「MEXCBT」間での技術連携仕様が規定されていましたが、2023年3月に公表されたVer.3.00では、MEXCBT以外の学習ツールや校務支援システムとも連携できるようになり、利用するシステムやソフトウェアの選択肢が広がりました

校務支援システムとの連携できることによって、児童・生徒だけでなく、教育者にとってもデジタルツールをより活用しやすい環境を整えることができるなど、デジタルを活用した教育環境を構築する上での自由度がより高くなっています。

>参考: 学習eポータル標準モデルVer. 3.00 暫定版(β版)

デジタル教科書の活用事例と今後の方向性

デジタル教科書を活用している学校では、実際どのような形でデジタル教科書を利用しているのでしょうか?

以下では、文部科学省の「デジタル教科書 実践事例集」などを元に、小学校・中学校におけるデジタル教科書の具体的な活用事例を紹介します。授業設計を考える際や実際に導入する際、ぜひ参考にしてみてください。

国内の活用事例

以下は国内における、学年・教科別の活用事例です。

【小学6年・国語:書き込み機能の活用】

小学校6学年の国語の物語文を作成する授業において、本文に積極的に書き込むことで自身の考えを形成することに成功しています。デジタル教科書では、書き込んでも簡単に削除することができるため、間違うことを恐れず、内容のより深い理解につながります。

また、同時に少人数制のグループ学習を行うことで、生徒同士が対話を通して深い学びを得ることにつながり、より充実度の高い対話を実現しました。

【小学4年・算数:面積の求め方】

小学4年生の算数の授業では、デジタル教科書の拡大機能や書き込み機能を活用し、図形の面積の求め方の統合的・発展的な考察をサポートしました

本事例は、大型提示装置にデジタル教科書内の課題を提出し、児童の手元のデジタル教科書でも同様に課題のみを拡大して表示させ、面積を求めるための補助線等を書き込みながら、図形の面積の求め方を考察するというものです。他に、それぞれの児童の習熟度に応じて、解法を複数挙げてもらいました。

課題を拡大することで、児童は課題や解法の考察活動に集中しやすくなるという効果がありました。加えて、端末に保存した自身の書き込みを他の児童とシェアして意見を交わすことにより、考察のさらなる発展を促しました。

【中学3年・英語・読解】

中学3年生の英語の授業で行われた本事例では、デジタル教科書と連携したデジタル教材(フラッシュカード等)を活用し、読解や音読活動への苦手意識の克服につながりました

具体的には、「大型提示装置に英詞を提示して音楽を流し、生徒にその歌を歌わせる」「フラッシュカードを大型提示装置に提示して新出英単語を音読させる」「発音がわからない英単語がある場合は、デジタル教科書と連携した朗読ツールで確認させる」などの指導を行いました。

デジタル教科書・教材をうまく活用することで、単語が理解できないことで読解につまづくケースが減り、スピーディーな読解や学びを実現できます。また朗読ツールを活用することで自主的に英単語等の読みを確認でき、英単語の読みに自信がない生徒でも、積極的に取り組めるようになりました。

>参考: 文部科学省 デジタル教科書 実践事例集

国外の使用状況

国外のデジタル教科書の使用状況や捉えられ方について、大韓民国・オーストラリア連邦 クイーンズランド州・アメリカを例に紹介します。

【大韓民国】

大韓民国において、デジタル教科書は法的根拠のある「教科書」のひとつとして位置付けられており、教育部は、デジタル教科書を「英語辞典やマルチメディアなどの多様な学習資料と学習支援機能を搭載した、児童生徒用の教材」としています。

2015年より、全ての学校においてデジタル教科書の使用が解禁されました。導入背景には、紙の教科書の限界や、デジタル教科書の導入によって期待できる教育効果などがあります。

【オーストラリア連邦 クイーンズランド州】

オーストラリア連邦クイーンズランド州において、デジタル教科書は教材としての位置付けであり、教科書としては位置付けられていないのが特徴です。各学校の責任で選定されており、多くの場合学校の所有物として貸与されています。

2008〜2013年に連邦政府・州政府等共同で実施されたICT教育推進プログラムにより、公立・私立等問わず、第9学年〜12学年(14〜17歳)の全生徒に1人1台の教育用PCが整備されています。政府と民間の連携によって、国内の全家庭・事業所からブロードバンドへのアクセスを可能にする環境整備への取り組みも進んでいます。

【アメリカ合衆国】

州の教育テクノロジー担当者の全国団体による2015年の調査では、アメリカ合衆国の24州がデジタル教科書は教科書に含まれると定義していることが明らかになっています。

州によって教科書関連の法令の規定は異なりますが、電子媒体やデジタル機器を活用した「教科書」「教材」の 授業での使用は認められており、公立学校ではデジタル教科書は無償で利用できるそうです。

2017年の時点で既に全米の学校のうち97%に光ファイバーが、88%にWifiが整備されているなど、デジタル端末やネットワーク回線等の整備やそのための公的支援が進んでいます。ニュージャージー州モンロー・タウンシップ高校を対象とした調査では、紙の教科書を使用した生徒に比べ、iPad端末でのデジタル教科書を使用した生徒は成績がよく、学習へのモ チベーションも低下しなかったという結果が得られているとのことです。

>参考: 諸外国におけるデジタル教科書・教材の使用状況について

デジタル教科書の進化と教育の未来

本記事では、デジタル教科書の概要や機能、導入背景、メリット・デメリット、活用事例など、デジタル教科書について網羅的に解説しました。

デジタル教科書の市場拡大やそれに伴う新たな動向によって、今後導入可能な教材やツールは多種多様になり、教育現場はさらに自由度が高く、学びやすい環境に変化することが予想されます。

実際にデジタル教科書や教材を活用して教育効果をより高めるためには、各教育現場でのニーズに合わせた工夫や、場合によってはMDMの導入が必要不可欠です。メリット・デメリットを把握し、実際の活用事例を参考にしながら、本格導入の準備を進めていきましょう。

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