【2026年最新】デジタル教科書の機能と未来:教育の新たな潮流を探る

カテゴリ
コラム 
タグ
B!

「デジタル教科書」とは、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコンで利用できるようデジタル化した教材のことです。現在は本格導入への取り組みが段階的に進んでおり、教育現場が大きく変容しつつあります。

デジタル教科書を活用することで、従来の紙の教科書では難しかった動きや音を伴うような学習体験が実現します。そして、児童生徒のより深い理解や積極的な学びへとつながります。

本記事では、デジタル教科書の概要や基本的な機能をはじめ、教育にもたらす新たな潮流や、具体的な活用事例などを紹介します。さらに、教育市場に与える影響にも触れながら、デジタル教科書が教育にもたらす可能性を一緒に見ていきましょう。

目次

デジタル教科書の全貌


まずは「デジタル教科書とは何なのか?」を明らかにするため、基本概念や従来の教科書との違いについてみていきましょう。

デジタル教科書の基本概念

「デジタル教科書」とは、紙の教科書と同じ内容をタブレットやパソコンで利用できるようデジタル化した教材を指します。

「デジタル教科書」は、生徒が使う「学習者用」と、先生が使う「指導者用」の2つに区分されています。「学習者用」は1人の生徒につき1台のデジタル端末を利用して学習することを想定しており、「指導者用」はプロジェクターなどで大きく映し出し、クラス全体へ説明するために使われるのが前提とされています。

2023年度までは、特別な配慮が必要な児童生徒への対応や授業改善などを目的として、紙の教科書の代わりに一定基準のもとで利用されていましたが、2024年度からは、小学5年生から中学3年生の英語で、紙の教科書と同様「主たる教材」として利用されています。今後は違う教科での導入も検討されており、段階的に実施される予定です。

>参考: 学習者用デジタル教科書について【文部科学省公式サイト】

教科書とデジタル教材の違い

「デジタル教科書」とよく似た言葉に「デジタル教材」があります。デジタル教科書を理解する上で必須となる言葉ですので、しっかりと両者の違いや特徴を理解しておきましょう。

現在では教科書の内容に合わせたデジタル教材も用意されており、デジタル教科書とデジタル教材を併用して授業が進められるのが一般的です。それぞれが持つ主な機能は、以下の通りです。

【デジタル教科書の主な機能】

【デジタル教材の主な機能】

デジタル教科書の範囲と限界

日本の学校では「教科書」を使用することが義務づけられています。

「教科書」とは、文部科学省が著作の名義を持つものか、出版社が編集した原案を文科省が調査し、合否を決定する「教科書検定」を経たもののみに限られており、内容が厳選されているのが特徴です。デジタル教科書の内容は紙の教科書と同じであるため、独自の検定は行われていません。

デジタル教科書の内容は紙の教科書と完全に同一でなければなりません。このため、「何がデジタル教科書に含まれ、何が含まれないか」という範囲が明確に決まっています。

【デジタル教科書の範囲内にあたるもの】

【デジタル教科書の範囲外となるもの】

文部科学省公式サイトでは、学習者用デジタル教科書を使用する際の基準として「①紙の教科書と学習者用デジタル教科書を適切に組み合わせた教育課程を編成すること」が明記されています。現時点では、両者の併用が前提とされていることを覚えておきましょう。

>参考: 文部科学省公式サイト「学習用デジタル教科書に関する法令の概要」

なお、これらの前提は2026年に大きく変わりました。2026年6月に成立した「学校教育法等の一部を改正する法律」により、デジタル教科書が紙と同様の正式な「教科書」として位置付けられ、国の検定制度の対象となります。これにより、これまでの「紙と完全に同一」という制約はなくなり、動画やシミュレーションなど紙にはない要素を含む教材の開発も可能になる見込みです(次期学習指導要領の実施に合わせ、2030年度から順次導入予定)。

デジタル教科書の活用と可能性

デジタル教科書に関する理解が深まったところで、具体的な授業の進め方について見ていきましょう。

また、文科省は下記ガイドラインにて、デジタル教科書を活用してできることに加え、デジタル教材やICT機器を組み合わせて実現できる、新たな学習の取り組みについても紹介しているので、その取り組みについても以下で詳しく紹介します。

参考: 学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン

デジタル教科書を活用した授業の進め方

先述したように、デジタル教科書には様々な機能が搭載されています。それらの機能を場面に応じて利用することで、紙の教科書では実現できなかった方法で学べます。以下が授業の進め方の例です。

また、「デジタル教材やICTと融合(後述)」することで、さらに高い学習効果が見込めます。

教材とICTの融合による新しい学び

デジタル教材とICTを融合することで、具体的には以下のような新しい学習方法が期待されています。

【デジタル教材やICTと融合した取り組み】

こうした様々なツールや教材をスムーズに連携させるのが、デジタル学習環境をより快適にする「学習eポータル標準モデル」という取り組みです。

導入することで、開発メーカーの違うアプリやソフト間でも、データを簡単に引き継いだり共有したりできます。このような連携によって、ICTを融合させた新しい学びの形は、今後ますます発展していくでしょう。

>参考: 文部科学省 総合教育政策局 教育DX推進室「文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)の活用に関する説明会」

>参考: 文部科学省「デジタル教科書に関する制度・現状について」

デジタル教科書の導入背景と展望


デジタル教科書の本格導入には、「GIGAスクール構想」によるICT環境整備の実現も大きく影響しています。「GIGAスクール構想」とは、全国の児童生徒1人につき1台のデジタル端末と高速通信ネットワークを一体的に整備する文部科学省の取り組みです。

教科書がデジタル化されたことで、文字の拡大や色の変更、文章を音声で読み上げるといった機能を利用できるため、学習障害や視覚障害がある生徒が学びやすくなる上、学習環境の改善にも効果があると期待されています。

本章では2024年度からはじまったデジタル教科書の本格導入の取り組みや、導入に対する様々な意見について詳しく解説します。

>参考: GIGAスクール構想の実現 【文部科学省公式サイト】

2024年度の本格導入と成果

文部科学省は2021年度から3年間にわたり、紙とデジタルを併用した際の効果や役割分担を検証する実証事業を実施してきました。

その結果、小学校の教科書改訂のタイミングに合わせ、2024年度から英語(小学5年〜中学3年)で、デジタル教科書が紙と同様の「主たる教材」として導入されました。さらに2025年度からは、算数・数学でも希望する自治体から導入がはじまっており、今後も段階的に対象教科が拡大される予定です。

今後、他の教科へ導入を広げるにあたり、国は紙とデジタルの使い方として、以下のような様々なパターンを想定し検討を続けています。

こうした検討を経て、2026年6月10日には「学校教育法等の一部を改正する法律」が成立し、デジタル教科書が紙と同様の正式な「教科書」として位置付けられました。これにより、今後の教科書は「紙」「デジタル(完全デジタル)」「ハイブリッド(紙とデジタルを組み合わせた形態)」の3種類となり、各教育委員会等がいずれかを選択します。ハイブリッド型は、紙の教科書に印刷されたQRコードを端末で読み取り、動画や音声を参照するような形態が想定されています。

新たな教科書は、次期学習指導要領の実施に合わせて2030年度から順次導入される予定です。正式な教科書となることで国の検定対象となり、義務教育段階では紙の教科書と同様に無償配布されます。

また、文部科学省は2026年4月に有識者会議を立ち上げ、使用開始年度や対象教科の目安を盛り込んだ指針を2026年秋ごろまでに策定する方針です。あわせて、発達段階への配慮から、小学4年生以下ではデジタルを主たる教材とすることは適当でないとの考えも示されています。

>参考: 文部科学省 デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめ

>参考: 令和5年度 文部科学省 学習者用デジタル教科書実証事業

導入に対する様々な意見

デジタル教科書の本格導入には様々な意見が寄せられています。

文部科学省に寄せられた意見では、紙の教科書に替わる教材としてデジタル教科書の導入に賛成する声もあるものの、学習効果の科学的根拠を問う意見や、効果の見極めなど、懸念する声も多く上がっています

以下に、「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめに関する意見募集の結果について」に記載された、分野ごとの主な意見の概要を一部抜粋します。

【紙の教科書と学習者用デジタル教科書の関係について】

【学習効果について】

【特別な配慮が必要な児童生徒への対応について】

【健康面への影響に対する配慮について】

こうした健康面や学習効果への慎重な意見にも配慮しながら、子どもたちの学びに最も効果的な活用のあり方を探っていくことが、今後の重要な課題となっています。

>参考: デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめに関する意見募集の結果について

デジタル教科書導入の課題と解決策

デジタル教科書の本格導入は新制度に盛り込まれてはいるものの、現在も多くの課題が残っています。

本章では、特に大きな課題である「コストとアクセシビリティ」、そして現在進行形で検証が進む「教育効果」について、その内容と今後の方向性を解説します。

コストとアクセシビリティの問題

費用負担のあり方

費用負担は、導入における大きな課題の一つです。2024年度に導入された英語のデジタル教科書は、国の予算によって全対象生徒へ無償提供されました。

しかし、2025年度から導入が始まった算数・数学は、導入を希望する自治体や学校が費用を負担する形となっており、自治体の財政状況によって導入に差が生まれる可能性が指摘されています。

自治体の負担を減らすためにも、価格について詳細なルールを選定していく必要があります。

ただし、2026年6月に成立した改正学校教育法により、2030年度以降にデジタル教科書が正式な教科書となれば、紙と同様に義務教育段階の児童生徒へ無償配布される見込みです。それまでの移行期における費用負担のあり方が、当面の課題となります。

アクセシビリティ(公平性)の確保

アクセシビリティという点では、端末の管理の問題や、安定的なネットワークの整備が必要になるため、家庭環境や地域環境によって教育環境に差が出るという問題が懸念されています。ひとつの端末で多くの情報やコンテンツを扱えるのは便利ですが、紛失やアクセス制限、情報保護などの対策も練らなければなりません。教材だけでなく、デジタル教科書を活用した学習をサポートするツールやソフトウェアの準備なども必要になっています。

>参考: 文部科学省公式サイト「12. 教科書無償給与制度」

>参考: 文部科学省「教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループについて(案)」

実証実験から見える教育効果

2024年度からの本格導入により、教育効果の検証は新たなフェーズに入りました。過去の実証事業に加え、現在は全国の学校での実践を通じて、より広範なデータや知見が集められています。

デジタル教科書等の活用に取り組む学校からは、以下のような意見が出ています。

先述したような様々な論点がある一方で、こうした教育効果を実感する声も多く上がっています。

>参考: 文部科学省 令和5年度予算「学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業」に参加予定の学校の皆様へ(事前の登録作業のお知らせ)

>参考: 文部科学省 デジタル教科書 実践事例集

デジタル教科書の機能と利用法


改めて、デジタル教科書の機能と利用法についてみていきましょう。

基本的な機能と特別支援機能

デジタル教科書には、「デジタル教科書の全貌」の章でお伝えした「基本機能」に加え、児童・生徒の特性により最適なサポートができる「特別支援機能」も備わっています。

デジタル教材と組み合わせることで学習効果をより高められます。場面や学習内容に合わせて、これらのツールを柔軟に使い分けることが重要です。

デジタル教材との連携

デジタル教科書とデジタル教材を連携して活用することで、以下のような学習ができます。

デジタル教科書のメリットとデメリット

デジタル教科書の活用におけるメリット・デメリットについて、生徒・教員それぞれの視点から解説します。

デメリットをしっかりと理解し、対策しておくことで、スムーズに導入できます。

生徒側のメリット

生徒にとってのメリットは、書き込み保存や音声、映像など、デジタル教科書ならではの機能を活用して学習できるという点です。

デジタル教科書では、マーカーを引いたり、メモを書き込んだり、後からきれいに消したりする作業が簡単なので、生徒は試行錯誤しながら自分だけの教科書を作れます。また、言葉だけではわかりにくい内容も、動画や音声と組み合わせることで直感的に理解しやすくなります。

英語の授業で音声朗読機能を活用すれば、ネイティブの発音を繰り返し聞けるため、リスニング力などの向上も期待できます。

教師側のメリット

教員視点からのメリットとしては、児童・生徒の学習状況や学力の把握が容易になる点や、授業の記録なども効率的に行えるという点が挙げられます。

これまで手作業だったテストの集計はもちろん、生徒一人ひとりの学習ログ(学習履歴)をデータで分析できます。これにより、個々のつまずきや理解度をより正確に把握し、一人ひとりに合わせた指導をしやすくなります。

デメリットとその対策

デジタル教科書を導入すると、端末を利用する必要があるため、生徒が端末にのみ集中してしまうというデメリットがあります

学習に関係のないアプリのダウンロードや、学習以外の目的でのWebサイトや動画の閲覧なども懸念されます。端末には閲覧制限や機能制限、アプリのダウンロード制限など、端末管理を実施することが必要です。

教員・学校側では、あらかじめ端末に対してのセキュリティ管理や、破損時の対応策を講じておく必要があります。紛失やハッキング被害などのケースも考えられるため、万が一の場合に備えておきましょう。

端末が使えなくなると、生徒の学習が一時的にストップしてしまいます。ハッキング被害を受けた際は、該当児童の名前や成績などの個人情報が漏えいする恐れもあるでしょう。

修理費用の負担ルールや、紛失・破損時に代替機をどうするかなど、万が一の運用ルールをあらかじめ学校と保護者で決めておくことが、スムーズな運用に繋がります。

便利なツールには相応のリスクが伴いますが、事前に対策を練っておくことで、そのメリットを最大限に引き出せるでしょう。

デジタル教科書の未来と展望


デジタル教科書の本格的な普及は、日本の教育におけるデジタルトランスフォーメーション(教育DX)の実現に向けた中核的な取り組みと位置づけられています。

教育DXが目指すのは、「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」の実現です。そのビジョンのもと、「学ぶ人のために、あらゆるリソースを」提供する仕組みづくりが進められています。政府はこのビジョンを具体化するため、2028年度までにデジタル教科書を実践的に活用する学校を100%にするという目標を掲げています。

また、株式会社富士キメラ総研の調査(2022年11月発表)によれば、2030年度にはデジタル教科書の国内市場が500億円(2021年度比の5.9倍)、教育DX/ICT関連の国内市場は3,644億円まで及ぶと予測されています。

>参考: 株式会社富士キメラ総研 プレスリリース『教育DX/ICTソリューション市場総調査 2023』まとまる

市場の拡大と教育への影響

デジタル教材や学習サポートツール、授業運営システムなどへの需要が急速に高まっています。印刷業界をはじめ、中小企業や関連サービス事業者の参入も進み、教育分野に新たな競争と活気を生み出しています。

一方で、端末の一括管理やセキュリティ強化といった「端末管理」の課題も浮上しています。その解決策として導入が進んでいるのが「MDM(モバイルデバイス管理)」です。これにより、学校全体でデバイスを安全かつ効率的に運用できる体制が整いつつあります。

このような取り組みが進むことで、より快適な学習環境が整い、教育効果の向上も期待されています。

また、学習eポータル標準モデルの最新版(Ver.3.00、2023年3月公表)では、文部科学省のオンライン教育システム「MEXCBT」だけでなく、さまざまな学習ツールや校務支援システムとも連携が可能になりました。これにより、学校や自治体が利用するシステムの選択肢が広がり、現場に合わせた柔軟な教育環境の構築が進んでいます。

>参考: 学習eポータル標準モデルVer. 3.00 暫定版(β版)

学びを支える「ツール」と「ネットワーク」

GIGAスクール構想の第2期(2024〜2028年)では、2025年度までに全国の学校で高速ネットワークを100%整備するという明確な目標が掲げられています。これは、生徒全員がデジタル教科書や多様な学習ツールを、ストレスなく使える環境を整えるための重要な基盤です。

今後は、生徒が自分の発達段階や特性に合わせて、生成AIなどを含む最適なツールを選び、主体的に学べる仕組みが求められます。国も自治体による多様なツールの導入を支援しており、ソフトウェア市場のさらなる活性化が見込まれています。

教師の負担軽減と教育の質の向上

教育のデジタル化は、教職員の働き方改革とも深く関わっています。

文部科学省では、業務の効率化を進めるため「12のやめることリスト(デジタルに変えること)」を提示し、校務のデジタル化を加速させています。

次世代の校務DX環境が整備されることで、事務手続きや各種調査の負担が軽減され、情報の一元管理(ワンスオンリー)も進みます。これにより、教員は煩雑な事務作業から解放され、子どもたちと向き合う時間をより多く確保できるようになります。結果として、教育の質の向上や、きめ細やかな指導の実現につながっています。

さらに、デジタルツールや学習データの活用により、教師はクラス全体の状況をリアルタイムで把握できるようになりました。学習の進行度や理解度を可視化することで、児童・生徒一人ひとりのつまずきや成長を的確に把握でき、個別最適化された指導が可能になります。

こうした仕組みは、教師の働きやすさと教育の質の両立を支える大きな力となっています。

>参考: 教育DXロードマップ

デジタル教科書の活用事例と今後の方向性

デジタル教科書を導入している学校では、実際にどのような形で活用しているのでしょうか。

ここでは、文部科学省の「令和6年度「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」授業改善事例集」などをもとに、小学校・中学校での具体的な活用事例を紹介します。授業設計や導入を検討する際の参考にしてみてください。

国内の活用事例

以下は国内における、学年・教科別の活用事例です。

【小学校の事例:自分で学びを調整する力を育む】

山梨県甲州市立塩山北小学校の6年生・外国語の授業では、単元末の発表に向けた表現力の向上を目標に、デジタル教科書と表計算ソフトを組み合わせた学習が行われました。児童が自分の課題に合わせて学び方を工夫し、効果的に復習する習慣を身につけることを目的としています。

【授業の流れ】
児童は前回の授業を振り返りながら、発表に向けた課題と家庭学習の内容を自分で設定します。その上で、デジタル教科書の音声コンテンツなどを使い、必要な語彙や表現を確認しました。学習の進行状況は、表計算ソフトで作成した「一覧シート」に記録・共有され、授業の冒頭では良い事例を全員で共有する時間が設けられています。こうした流れにより、家庭学習と授業の活動が自然につながりました。

個別学習の時間には、児童がデジタル教科書、過去の発表動画、インターネット検索など、複数のツールの中から自分に合う方法を選び、表現を磨いていきました。

【成果と工夫】
最大の成果は、デジタル教科書の教材と表計算ソフトを組み合わせ、家庭学習と授業を一体化できた点です。これにより、児童が自分の学びを主体的に調整できるようになりました。また、「インターネット検索等で見つけた難解な表現は、相手に伝わりにくいこと」を生徒に伝え、わかりやすい表現を振り返るよう指導したことで、児童はツールの特性を理解し、目的に合った学び方を選べるようになりました。

【中学校の事例:考えを伝え合いながら理解を深める】

埼玉県所沢市立山口中学校の1年生・数学の授業では、「平面図形」の単元で扇形の中心角を求める問題を扱いました。ここでは、デジタル教科書とICTを活用した「ジグソー法」を導入し、論理的に考えを表現する力の向上を目指しました。

【授業の流れ】
生徒たちは4〜5名のグループに分かれ、扇形の中心角を求める2つの解法のうち、いずれかを個人で担当します。デジタル教科書を使って、自分のペースで既習事項を確認しながら、学習支援ソフト上のワークシートに考え方をまとめました。必要に応じて、ソフト上のクラスメートの考えを参照し、自分の理解を深めることも促されました。

その後、グループでワークシートを見せ合いながら、自分の担当解法を互いに説明し合う活動を行いました。

【成果と工夫】
デジタル教科書の機能を使い、問題に取りかかる前に「自分で解決の手がかりを探す時間」を設けたことで、生徒の主体的な学びが促されました。また、ジグソー法によって「自分の考えを言葉にして伝える必要性」が生まれ、学習支援ソフトによる思考の可視化・共有が加わることで、クラス全体の理解が深まりました。生徒は、自分の担当外の解法や他者の表現からも刺激を受け、思考力と表現力の両面で成長を実感できる授業となりました。

>参考: 令和6年度「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」授業改善事例集

国外の使用状況

国外のデジタル教科書の使用状況や捉えられ方について、大韓民国・オーストラリア連邦 クイーンズランド州・アメリカを例に紹介します。

【大韓民国】

大韓民国では、2015年からデジタル教科書の使用が全ての学校で解禁され、社会・科学などでマルチメディア機能を備えた教材として活用されてきました。導入背景には、紙の教科書の限界や、デジタル教科書に期待される教育効果などがあります。

デジタル教科書の使用率(2022年10月時点)は、初等教育学校で99.8%、前期中等教育学校97.5%、後期中等教育学校96.3%と高い水準にあります。

さらに2025年3月には、AI(人工知能)を活用して一人ひとりに最適な学習を提供する「AIデジタル教科書(AIDT)」が、世界で初めて導入されました。対象は小中高の一部学年で、英語・数学・情報の3教科からのスタートです。

ただし、教員の準備不足や学習効果への懸念などから、2025年8月に韓国国会はAIデジタル教科書を「教科書」ではなく「教育資料(補助教材)」へ格下げする法改正案を可決しました。これにより義務使用の対象から外れ、2025年2学期に導入した学校数は1学期の約半数まで減少するなど、政策は大きな見直しを迫られています。

【オーストラリア連邦 クイーンズランド州】

オーストラリア連邦クイーンズランド州において、デジタル教科書は教材としての位置付けであり、教科書としては位置付けられていないのが特徴です。各学校の責任で選定されており、多くの場合学校の所有物として貸与されています。

2008〜2013年に連邦政府・州政府等共同で実施されたICT教育推進プログラムにより、公立・私立等問わず、第9学年〜12学年(14〜17歳)の全生徒に1人1台の教育用PCが整備されています。政府と民間の連携によって、国内の全家庭・事業所からブロードバンドへのアクセスを可能にする環境整備への取り組みも進んでいます。

【アメリカ合衆国】

州の教育テクノロジー担当者の全国団体による2015年の調査では、アメリカ合衆国の28州がデジタル教科書は教科書に含まれると定義していることが明らかになっています。

州によって教科書関連の法令の規定は異なりますが、電子媒体やデジタル機器を活用した「教科書」「教材」の授業での使用は認められており、公立学校ではデジタル教科書は無償で利用できるそうです。

2017年の時点で既に全米の学校のうち97%に光ファイバーが、88%にWi-Fiが整備されているなど、デジタル端末やネットワーク回線等の整備やそのための公的支援が進んでいます。ニュージャージー州モンロー・タウンシップ高校を対象とした調査では、紙の教科書を使用した生徒に比べ、iPad端末でのデジタル教科書を使用した生徒は成績がよく、学習へのモチベーションも低下しなかったという結果が得られているとのことです。

>参考: 諸外国におけるデジタル教科書・教材の使用状況について

デジタル教科書の進化と教育の未来

本記事では、デジタル教科書の概要や機能、導入背景、メリット・デメリット、活用事例など、デジタル教科書について網羅的に解説しました。

デジタル教科書の市場拡大やそれに伴う新たな動向によって、今後導入可能な教材やツールは多種多様になり、教育現場はさらに自由度が高く、学びやすい環境に変化することが予想されます。

実際にデジタル教科書や教材を活用して教育効果をより高めるためには、各教育現場でのニーズに合わせた工夫や、場合によってはMDMの導入が必要不可欠です。メリット・デメリットを把握し、実際の活用事例を参考にしながら、本格導入の準備を進めていきましょう。

今ある書類のデジタル化ならActiBook

【関連記事】

導入事例|ActiBook

関連記事

デジタル教科書の現在と未来 - 普及率から見る教育の変革

デジタルパンフレットの基本から、革新的な活用法とビジネスへの影響力

営業成果を加速するセールスイネーブルメント戦略